日本最古の当身文献    柳生新陰流『外の物の事』「小脇差居相とりでの事」

柳生新陰流『外の物の事』「小脇差居相とりでの事」

一、こわきさしなとにてつくもの、むねの目付をとむる心よし。左をいたしかゝるものにハ、左のかいなのそてをとるよし。人をつくときハ右のそでをとり、ひざを足にておさへ、のとのからをかく分別よし。さなくハ、脇の下をつく也。

一、とられて色々の心持有、とられたる所に心を入、せりあふ事あしゝ、とられたる所をハ、けいきばかりにして、かしらをなげつけ、足にてふむ也。むねいきあひ、それへあたる拍子にとられたる所をはつす事肝要也。色々あたりやうある也。

一、人しちにとられてハ、わきさしのさき、わか方へむかい、下よりこふしをとりてよし。よこにあてかハヽ、右のひちのかゝりをとりてよこにをしつけふむ事専一なり。

一、わかわきさしを片手にてとめ、わきざしをぬき、つかんとするものをハ右のかいなうえへなる袖をひきつけ、てきのひだりひさをふミ、ひきつけれハ、たおるゝもの也。

一、わか両手のうでをつよきものにとられたる時ハ、わがあたまにててきのつらをうち、その気をとりてひきわけふむ也。

一、わか大かたなのつかを両の手にてとめられたる時ハ、こぶしを足にてふミつけ、てきの右かいな、ひちのかゝりをまへゝひきたおす也。

一、両の手にて、わかわきさしをとめられたる時ハ、両のかいなの下へわか両の手をいれて、わが身ともにひきたおるゝ也。

一、ふせり候て居候時、うへよりおさへられたる時のはつし、むねへよこに、わきさしをおさへ、すくにあてかひ候もの、いつれも同事にとり、片足をてきのつらへうちこミ、わが身との間へいるゝ事肝要也。いれられ候へハ両の足ともによし。

一、あおのきにねたる時おさへらるゝ時ハ、てきのまたへ手をいれ、てきのあたまうでをとりてひきかづき、はね候へハ、たおるゝものなり。

一、いづれも、かやうの儀に、てきの気をとりぬすミ、表裏をもつていたすもの也。うつ所肝要なり。

  一、てきのつら
  一、同くび
  一、のどのから
  一、両のひぢのかゝり
  一、両の足のかゝみめ
  一、そばはら
  一、きんのあたり
  一、うしろよりハ、かうかうのあたりをつく事
  一、かしらのはへきわのくひをよこにうつ事

  是みないたミ所なり